映像視想メモ(7)  

<映像視想メモ・第7回> 1981年執筆


 「キネマ・ハウス」という自主製作映画の常設館が、2月から胎動をはじめた。

 午後6時までは喫茶店として営業しているが、喫茶店をやることが目的ではなく、自主製作映画の常設館をやりたいというのが本来の動機なので、喫茶店はあくまでも維持するための手段である。とはいうもののさほどはやっているようにも見えないので、維持し続けていくのは相当にしんどいことだろう。いずれにせよ、気まぐれの熱っぽさでは長続きするはずもないことは覚悟しておかなければならない。動機の底に本物の情熱が腰を据えて宿っているものかどうか、こちらもじっくりと腰を据えて見きわめていきたいと思う。

 営業は、休日を除いての月曜から土曜まで。入場料はドリンク付きで500円。

 プログラムは週替わりで敢行するというから、年間52プログラムを組まなければならない。これは、現在の自主製作映画の量産状況下では決して無理な数ではないが、そのすべてに眼がいきとどくわけではないし、コンタクトをつけえる作品が関西のものに傾きやすいこともあって、作品の質という面からみれば相当に無茶である。いきおい全体の質は低下せざるをえない、という結果を招きかねないことはよくよく心しておかなければならないことだろう。やり続けることには貴重なメリットが一杯あるけれど、やるということだけに一面的に意義を認めすぎると、結果的に目的が逆転してしまう場合がある。それゆえに、作品の選択基準もしっかりと持つことが、なによりも肝要なことではないだろうか。

 プログラムの予定は、いまのところ3月一杯までは決まっているが、それ以降ははっきりとしていない。これぞと思う作品をお持ちの方や見知っている方は、ぜひとも教えてほしいとのことだ。

 見るものにとって日曜休日が休みというのはいささかきついが、これらの日は、イベント日として持ち込みの企画にも使えるように、どうしてもあけておきたいとの意図があり、そうした企画を持ち込んでくれることも歓迎している。

 この「キネマ・ハウス」を維持するために4人の侍が力を併せてはりきっているが、たとえ一人になろうともやり抜いてやるといったたくましい気概をもって運営にあたってほしいと思う。初心を貫いて下さい。



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 予想していたことでしたが、この「キネマ・ハウス」は半年ももたず、あっという間に消滅してしまいました。この取材の動機は自発的なものではなく、編集部の企画ではなかったろうかとおもいます。

 主催者の人たちと話しをしていて感じたことは、現実的な視野が狭く、かつ情熱が浅きにすぎないか、という危惧でした。

 こういう企画は、やりはじめるすべりだしのゴタゴタよりも、やり続けるゴタゴタのほうがはるかに大変です。それゆえ、経済的にも、実作業の分担にも、事前にしっかりとした見通しを立てておくことが必要となります。もともと同床異夢の4人が集まっているのだという基本認識からはじめなければならなかった。それが欠けていました。

 ひとりでもやり続けるという意志と情熱を持つ人間がこのなかにただのひとりでもいたなら、もたれかかりあいのなかで情熱がすり減り、相互に罪をなすりつけるという最悪の事態は、なんとか回避されたことでしょう。

 この文章には、はじめ、その所在地を文面で表現しておいたのですが、視覚的にわかるよう地図に差しかえることになり、その分8行(16字づめ)を削除しました。それで、ここではいきおい短文と化しました。